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[暮らし方と事例紹介 6]

個室はいつ作る? 子ども部屋の重要性とリノベーションのポイント

どんな幼い子どもでも、悲しいときや腹が立ったときには、ひとりになって心を静める行為が大切です。それが子どもの精神的な成長をうながします。子どもに与える空間には、子どもの自律を促すという役割があるのです。

一般的には年齢とともに、住まいの中で子どもがよくいる居どころは、リビングから自室へと変化していきます。就寝のしかたは、親子で川の字から、兄弟一緒や一人で就寝へと変化しますが、いつ頃、どのように部屋を与えればいいのかを悩まれる方がたくさんいます。生活の仕方によって、子ども部屋は使い方や必要な広さ、そろえたい家具も変わっていくものです。子どもの数が増えれば部屋の数も増やすべきかもしれません。それだけにいつ、どんな子ども部屋をつくればいいのか迷ってしまいますね。

そこで今回は子ども部屋の重要性や時期、リノベーションで子ども部屋をつくるときのポイントについて解説します。またヒントになりそうな事例もご紹介していきます。

子ども部屋は子どもの年齢と成長に合わせて検討しよう

家の中で子どもに与えるスペースには、子どもの年齢と成長に応じていくつかの段階があります。

日本では、乳児の頃はベビーベッドに寝かせ、夜は両親と同じ寝室で、昼間はリビングなどで親と一緒に過ごすというケースが一般的です。その後、兄弟ができても家族一緒に川の字で就寝することが多く、昼間の居場所はまだリビングが中心です。

小学校に上がると独立した部屋を与える場合もあります。しかしダイニングテーブルで宿題や勉強をする子どもが多いのではないでしょうか。中には個室ではなく、親の目が届くリビングの一角に子どものためのスペースを併設する家庭もあります。また、就寝はまだしばらく川の字が続いていることが多く、主寝室と子ども部屋がある間取りであっても、その通り使われている家庭が少ないことが、いくつかの調査で明らかになっています。子どもによっては、両親や兄弟からのプライバシーを主張して、自分の部屋がほしいと言い始めるケースもあります。

子ども部屋をどのような形で与えるかは、各家庭のライフスタイル、子ども自身の希望、教育方針などによって変わってきます。子どもの年齢と成長に合わせて、子どもの様子も見ながら検討していきましょう。

子どもに個室を与えるメリット・デメリット

独立した個室の子ども部屋をつくることにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれ挙げてみましょう。

メリット

  • 片付けや掃除などに責任を持つことで、身の回りの管理能力を養える。
  • 静かな環境で、自分だけの机を使って勉強できるようになる。
  • 子どもの持ち物をまとめて置くことでおもちゃなどがリビングに散らからない。
  • プライバシーや一人で考える時間を与え、自律の能力を養える。
  • 子どもが友達を家に呼びやすくなる。
  • 子ども自身が他人のプライバシーについても考える契機になる。

デメリット

  • 親の目が届きにくくなる。音も聞こえづらくなる。
  • たとえば勉強すべきときにそれ以外のことをしていても気づきにくい。
  • 家族での会話が少なくなる。食事後すぐに自室に戻ってしまうなど。

子ども部屋をつくる時期はいつ頃がいい?

子どもに独立した部屋を与えるタイミングに、明確な基準があるわけではありません。また、独立していなくても子どもが自分で管理するエリアを与える時期も大切です。

一方欧米では、生後しばらくはベビーベッドが両親の近くに置かれますが、まもなく個室を与え、そこで寝かせるという習慣が根付いています。映画や絵本などで見たことがある人もいるのではないでしょうか。その理由は、夫婦で過ごす時間を大事にするためであり、寝室が個人のプライベートな空間であると位置付けられているためです。その結果、幼い頃から子どもは自分一人で過ごす時間を持ち、自律心を養うことができていると考えられています。しかし子どもとのスキンシップは大切なので、欧米でも子どもが寝付くまでは両親が子どものベッドサイドで会話したり、昼間は子ども室が家事や仕事の場として共有されたりもしています。

まずは、個室を与える意味を考えましょう。個室は一人で考えたり、心を静めたり、自分で部屋の管理をすることに大きな意味があります。その目的を考えると、勉強部屋としてではなく一人で暮らす寝室として与える時期が大切なのです。子どもは自分の身の回りの管理ができるようになり、一人で自分のことを振り返ることから周囲の人たちを尊重する心が育ちます。

ではそのタイミングですが、いくつかのきっかけが考えられます。1つ目は、欧米と同様、ベビーベッドから子ども用ベッドに移った頃です。日本では集団生活を重視し、その文化が現代にも根付いているせいか、洋風の暮らしになってもこの時期に別寝する人はほとんどいません。欧米の子育て感を取り入れようと考える場合、小さい時から自室で寝かせる習慣をつけ、その代わりできるだけ両親が子ども部屋にいる時間を作ってベッドサイドで寝かしつけるまでコミュニケーションと取ることが重要です。

次のタイミングは小学校入学です。学習デスクや本棚とともに勉強部屋を与える時期です。小学生になるとそれまでと生活スタイルは変わりますが、勉強はリビングの一角(家族がおもいおもいのことをしている空間)で、時には教えられながら勉強すればいいのです。部屋を与えるのであれば、衣類や持ち物を自室に収納し、就寝を分離して生活の自立を促すことです。

3つ目のタイミングは思春期です。子ども自ら一人でいることを希望するようになれば、自分の生活全体を管理する個室を与えて下さい。この時に、インテリアにできるだけ子ども自身の意見を取り入れることで、自室の管理を促す効果があります。また、勉強についてはリビングの一角に多目的のデスクなどを用意して子どもの居どころを残すことで、対話のきっかけになります。

子どもが自立して巣立っていくために個室を与えることは有効です。住まいの規模や家族の暮らし方によりますが、思春期に至るまでのタイミングで、一人になれる場所を与えることを考えましょう。

個室をつくるときに注意したいこと

子ども部屋をつくるときにはよく話し合い、いくつかルールを決めておくことをおすすめします。

たとえば自室は自分で片付けることというルール。ゴミの捨て方、掃除の仕方、衣類のたたみ方、収納の仕方などを教えて自分一人でできるようにします。またゲームなどは自室ではやらないなどのルールも必要でしょう。スマホの扱いも決める必要があります。

部屋のドアを開けておくというルールにしている家庭もあります。ドアを閉めるようになってからは入室の際のノックについてもお互いにマナーを守るようにしましょう。これらは親子でよく話し合いながら決めていくことが重要です。一緒にルールを決め、守ることで独立心が育っていくはずです。

またリノベーションで新たに子ども部屋をつくるとすれば、年齢によって空間の使い方が変化するため、子どもの成長と独立後までを見越した将来計画を想定しておくといいでしょう。

たとえば小さい頃は兄弟で一部屋を共有して二段ベッドを使っていても、大きくなれば部屋を分けたくなるでしょう。そこで2人兄弟ならあらかじめ部屋を2つ作っておき、片方を勉強部屋、もう片方をベッドルームにするという方法も考えられます。また将来、間に間仕切り壁を作れるように予め2つのドアがある大きな部屋にしておく方法もあります。

リノベーションで子ども部屋をつくるときのポイントは?

子どもの誕生に合わせてリノベーションで子ども部屋をつくるときは、次のようなポイントを念頭に置いて間取りなどを考えてみてください。

引き戸を利用する

個室をつくっても家族とのコミュニケーションが減ることがないよう、ドアを閉めないルールが大切だと前述しました。その場合、ドアを引き戸にすると、開けた状態でも邪魔にならず、自然な空間になります。

リビングの近くに配置する

リビングの近くやリビングから見える場所に子ども部屋があれば生活空間が近くなり、お互いに安心感が増します。親子の動線が交わることで、コミュニケーションの機会が減ることも抑えられるでしょう。まだ小さいうちはドアを作らず、リビングのコーナーを与えてシームレスな関係にする方法もあります。その場合、子どもが自分のエリアを意識できるよう、子どもの持ち物や専用のエリアを作ってあげるようにして下さい。お片づけなどのしつけにも役立ちます。

健康的で本物の仕上げ材を使う

子どもの成長は、感性の発達から始まります。生まれてきた環境や自分の周りの人を、五感で感じとるのです。特に大切なのが、味覚、嗅覚、触覚という近いところを感じる感覚です。わからないものを触ったり舐めたりして観察する行動です。ですから空間づくりでは、無垢材の床板や家具、塗り壁や布クロスなど、樹脂や印刷されたものではなくできるだけ本物の素材を使って下さい。それが子どもの原体験となり、いいものを選ぶ力がつき、感性を育みます。また、建材や家具を選ぶときにはシックハウス対策について確認しておくことも大切です。

子育て世代におすすめの子ども部屋のリノベーションアイデア

子ども部屋には子どもが居心地良く楽しく過ごせるような空間であることも求められます。以下のようなアイデアで、子どもが生き生きと成長できるような部屋をつくってみましょう。

子どもの成長に合わせて変化する間仕切りに

子どもが幼いうちは広いリビングの一部を子どもの遊び場や居場所として確保。やがて独立した子ども部屋が必要になったらリビングの一部を間仕切りなどで個室にする、というアイデアです。リフォームで壁も作れますが、可動間仕切り収納を利用することも可能です。まず、自分の持ち物を管理する収納クローゼットを与え、その収納の位置を変更することで、兄弟で一つの部屋を使っているときも、完全に分割するときにも対応できます。

二段ベッドやロフトで収納力をアップ

兄弟で共用する子ども部屋には二段ベッドを置くとその分、部屋を広く使えます。二段ベッドを部屋の真ん中に置いて擬似的に部屋を2つに分ける方法もあります。また天井高が高ければロフトを付けるとそこで寝たり収納場所として使ったりできて便利です。空間を立体的に工夫することで収納力アップだけでなく、高さの変化は子どもの感性も育みます。

お絵描きできる壁

壁に黒板塗料を塗る、あるいはホワイトボードやガラス黒板という、書いて消せるボードを貼るなどして、子どもに自由に絵や文字を描かせるのも面白いでしょう。子どもと一緒に今日あったことを描きながら話すことで、会話が楽しくなり、脳の発達にも有効です。ですから、お絵描きできる壁は、リビングルームの一角にしつらえても楽しいのです。

子どものワクワクをそそるロフトルーム

戸建住宅ならロフトルーム(屋根裏部屋)を子ども部屋にするという方法も考えてみてはどうでしょうか。斜め天井や狭い空間の秘密基地っぽさが子どものワクワク感をそそるはずです。欧米の住宅では、リビングルームや主寝室を一番いいところに作り、子ども部屋はロフトに作ることも多いです。子どもが巣立った後、収納スペースなどとして活用できます。
ロフトは環境が良くないので、屋根裏には断熱を行い、風通し窓とエアコンは忘れずに付けましょう。

子ども部屋のリノベーション事例

最後に子ども部屋の具体的なリノベーション事例をご紹介します。

リビングの一画に子どもたちのスペースを

兄弟の勉強机を並べたこのコーナーは、実はリビングの一部。家族でともに過ごす空間を共有しているとお互いの気配がわかり、いつでもすぐにコミュニケーションできるため親子どちらにとっても快適で、宿題もはかどりそうです。

共有の子ども部屋でいろんな遊びが可能に

3姉妹のためにつくった広い子ども部屋。広いのでおもちゃをいっぱい広げて遊ぶこともマットを敷いて運動することも可能。3人のベッドが並ぶ寝室は別にあります。将来は部屋を分けるかもしれませんが、今は3姉妹で一緒に過ごす時間を大切にしています。

可愛さがきわだつ2人の子ども部屋

こちらは2人姉妹の部屋。小学生くらいの時期、または同性であれば、学習と就寝を共有しても構わないと思います。いずれ、それぞれの子の個室にすればいいと思います。2階にある部屋は斜め天井になっていて白とパステルカラーで塗り分け、机もベッドも木製なのが可愛い印象。窓が多く開放的で明るい雰囲気となっています。

ロフトスペースに子どもの遊び場を

大人はかがまないと頭をぶつける天井の高さのロフトスペース。でも子どもには十分な高さと広さの遊び場に。子どもは視線の高さが変わることが大好きなだけでなく、部屋を3次元で認識することが創造性にもつながります。家の中にこんな場所があれば子どもが喜ぶこと間違いなしです。

部屋を半分こして使えるよう家具を配置

兄弟が海賊に扮して銃を撃ち合っている場所はそれぞれのベッド。その間に勉強机を向かい合わせで並べて、お互いの居場所を分け合って過ごせるレイアウトにしています。ちなみにベッドも机もアクタスの家具が使われています。

子どもは、生まれてから大人になるまでの間に、体格や体力、頭脳や感性、そして社会への適応力が驚くほど成長します。それを支えるのが、住まいの中の子どもの居どころです。居どころは決して子ども部屋だけではなく、家族の空間、お客様との空間、キッチンや庭など、多くの空間から自分なりに感じ取っています。ですから、子ども部屋にどんな役割を持たせるのかを成長に沿って考え、子ども部屋のリノベーションプランを立ててみてください。子どもは自分が育った空間を忘れません。