Case Study 事例紹介

約60㎡に「部屋」を増やして「ゆとり」も生み出すリノベーション

S様邸(東京都中野区)

面積:61.7m² 間取り:1LDK→2LDK+フリースペース ご家族:ご夫婦 + お子様1人

「この家は、私の祖母が住んでいたものでした。私が20代の時にここでひとり暮らしを始めて、その後、夫と結婚してふたり暮らしになり、今は子どもが生まれて3人暮らし。これからもここに住み続けるために、親子3人で快適に暮らせる空間にリノベーションしたいと思ったんです」

40代のご夫婦と6歳の息子さんのSさんご家族が暮らすのは、東京都中野区にある築50年越えのマンション。幾度かの大規模修繕が行われていて、管理もしっかりしている建物でした。リノベーション前は、約17畳のLDKと約8畳の寝室という1LDKの間取りで、Sさんご家族の希望は、主寝室と子ども部屋として使う2つの個室をつくること。面積は約60㎡ありましたが、住戸の中に撤去することのできないパイプスペースや柱があり、Sさんはもともとあった個室はそのまま使い、リビングの一部を個室にするプランを想定していたそうです。

「LDKが狭くなってしまうけど、しょうがないなって。そうしたらアクタスから『ここがフリースペースになりますよ』と今の家のプランを提案されたんです。子ども部屋は約5畳、主寝室は約5.5畳あって、個室としては十分な広さ。2部屋を確保しながら、さらに自由に使えるスペースが生まれるなんて想像もしていなかったので、びっくりしました。今、フリースペースは私のリモートワークスペースとして使っています。適度な独立感もあって、仕事をする時に気分が変わるのがいいです。それでいてLDKとは仕切りなくつながっているので、仕事の合間に家事をするのもスムーズです」

子ども部屋とサニタリーへの動線も兼ねたフリースペースは約4畳。今後、奥様の働き方が変わったらお子さんのプレイスペースにしたり、お子さんが成長したら本棚や照明を置いて書斎風にしたり。テレビ線も引き込んだので、テレビを置いてリビングとして使うこともできます。「ライフステージの変化とともに使い方を変えていきたい」とSさん。用途を限定しないフリースペースの存在は、今後も変わっていく家族の暮らしにゆとりと楽しみをもたらすことにもつながりました。

「以前のキッチンは、祖母の身長に合わせてあったので低かったんです。新しいキッチンは高さが85cmあって、自分に合った高さのキッチンはこんなに使いやすいのかと感動しています。シンクの横の引き戸はカップボードで、以前のキッチンにあって便利だったので再現してもらったもの。できる限り収納量を確保したかったので、コーナーの奥の部分も、普段使わないものをしまうスペースとして使っています。窓側につくってもらったカウンター台もこだわったところで、タッチで開くゴミ箱の蓋を閉める動作が大きくなりすぎないよう、ゴミ箱の蓋がちょうどいい開き具合で止まるように、天板の薄さを調整してもらいました」

アクタスオリジナルの『Scandinavian Way』のキッチンは、面材は白、戸当たりはステンレス、手掛けはオークをセレクトしました。タイルメーカーのショールームに行って選んだというタイルは、艶なしのグレー。中盤サイズが目新しさを感じさせますが、ノーマルな通し目地張りで、個性がありつつも主張はしすぎない、落ち着いた雰囲気をつくっています。

「キッチンに取り付けたVLリングクラウン1ペンダントは、アクタスが提案してくれました。もともと、この照明と同じデザイナーがデザインしたVL45 ラジオハウス ペンダントを、ホールに吊るしたいと思っていたんです。祖母がこの家に住んでいた時、このホールの壁に絵を飾っていて、その眺めがとても良かったんです。そんな空間にしたくて、この照明をホールに飾りたいとアクタスに相談しました。アクタスの担当の方は『ダイニングじゃなくてホールにですか?』と驚いていました」

絵ではなく、ペンダントライトを「飾る」。Sさんのそのアイデアは、ホールに「場」としての存在感をつくり出しました。また、キッチンのペンダントライトを同じデザイナーの作品にしたことで、フリースペース側からのLDKとのつながりも、強く感じられるようになりました。デザインコンシャスな照明器具で空間を飾り、住まいの統一感も図る、照明による空間演出の好例です。

「玄関は、下足入れをセパレートタイプにして、小物を飾れるスペースをつくりました。全面を収納にすると玄関に圧迫感が出てしまうし、鍵などは見えるところに置いておきたかったので。主寝室のクローゼットのほかにも服をしまえる場所が欲しくて、玄関の収納の一部はハンガーパイプを取り付けて、アウターが収納できるようにしてもらいました」

キッチン以外の収納は、主寝室と子ども部屋にそれぞれクローゼットを設け、書類や小物などの細かいものは、壊せない壁と新設した壁の間に棚をつくり、収納できるようにしました。「隠す」タイプの収納を基本にしつつ、さりげなく「飾れる」収納も取り入れることで、白と明るい色の木をベースにしたシンプルな空間に、暮らしの彩りを添えられるようにしています。家全体での収納量はミニマムですが、マンション内にトランクルームがあり、季節家電などの大きいものはそちらにしまうことで、居室として使えるスペースを最大限確保しました。

「水まわりは祖母が住んでいたころにリフォームされていましたが、それから20年近くが経っていました。浴室と洗面室、トイレはブロック壁で仕切られていて、コストのことも考えて壁はそのままで、設備機器と内装を新しくしています。あと、このマンションは直床構造で、配管類が床下のモルタルに埋まっている形だったんです。だから配管は竣工当時のままで、毎年マンションの配管掃除をしてくれている業者の方にも、住戸内の配管を交換した方がいいと言われていました。コストはかかりましたが、水漏れなどの心配をせず今後を暮らしたかったので、モルタルを壊して配管を新しくして、今後もメンテナンスがしやすいよう二重床にしてもらいました」

洗面台はキッチンと同じ白の面材とオークの手掛けで、収納も同じデザインで造作しました。洗濯機の上には、Sさんのリクエストでハンガーパイプを造作。洗濯機から取り出した洗濯物をハンガーに通し、ここに一時掛けしてからバルコニーへ運ぶことができます。竣工当時のままだった給湯器も交換し、Sさんの念願だった追い焚き機能があるものを取り付けました。「今時のマンションでは普通のことだと思いますが、我が家ではこれまで追い焚きできないのが普通だったので(笑)。すべてがものすごく便利になりました」とSさん。以前から暮らしていた家だけに、リノベーション後の住まいの快適さをしみじみ感じていると話します。

「壁と天井を断熱化することも、リノベーションで叶えたかったことでした。この部屋は角部屋で窓が多く、最上階なので天井の上は屋上。数年前の大規模改修で窓は新しくなっていましたが、壁や天井は断熱が不十分で、夏は暑いし冬も寒くて。それと、隣戸への音の影響も気になっていたので、隣戸と隣り合う子ども部屋の壁面は遮音壁にしてもらっています。リノベーションしてから初めての冬を過ごしましたが、家の中が寒くないというのは、本当に快適ですね」

子ども部屋の壁の一面にはアクセントカラーを取り入れ、グリーンがかったブルーで塗装しました。ゆっくり休む場所である寝室は、LDKなどの居室よりもひといき暗いグレーで壁天井を塗装。ファブリックの面積が多い空間なので、寝室の窓はカーテンではなくウッドブラインドをコーディネートしました。

「昔からアクタスの新宿本店によく通っていて、リノベーションルームHOWができた時も見に行きました。一番にアクタスへリノベーションの相談に行くことは決めていたけれど、別の会社にも相談して、相見積もりをとったんです。金額はどちらもそう変わらなかったのですが、提案してもらったプランに惹かれてアクタスに決めました。なにより、アクタスの担当者の方の対応が良かった。何かを質問した時にはすぐに返答をくれるし、こちらの知りたいことに的確な答えをくれるので、信頼が持てました。家づくりの最中も、こちらが気になる素材があったら採用できるか一緒に考えてくれて、理想のイメージを伝えるとそれに合うものを探してきてくれる。家づくりって、施主とつくり手の間に駆け引きが感じられると疲れてしまうと思うんです。でも、アクタスから感じたのは『とにかく良い住まいをつくりたい』という想いだけ。家づくりの過程を含めて、出来上がったこの空間をとても気に入っています」

休日にベッドをソファ代わりにしながら、ダイニングで遊ぶお子さんとそれを見守るご主人の姿を眺めている時間が幸せ、と話すSさん。間取りやインテリアだけでなく、住まい自体の性能もアップさせるリノベーションで、生まれ変わった築50年越えの住まい。家族の暮らしを支える存在として、これからも活躍してくれることでしょう。

photo:Hirotaka Hashimoto
text:Kanako Satoh