Case Study 事例紹介

陽の光と共に暮らす、「私」を元気にする部屋

A様邸(神奈川県川崎市)

面積:58.26㎡ 間取り:2LDK ご家族:単身

朝日と共に始まるAさんの一日。南東向きの部屋の窓から見えるのは、川辺と空の景色。カーテンをつけていない窓から差し込む朝日を浴びながら起床し、部屋を掃除して、リビングでヨガをするのがAさんの朝のルーティン。日中は、照明をつけなくても明るい部屋で仕事。壁掛け時計の代わりに時間を知らせてくれるのは、窓から差し込む光の動き。「リノベーションをしたことで、ずっと思い描いていた理想の生活が叶いました」とAさんは話します。

「今は50代ですが、これから年齢を重ねていくにあたって、将来にも対応しておきたいと思いました。定年してからいろいろ楽しもうと思っても、きっと今より体力も気力も減ってしまう。先延ばしにしてもメリットは少ないなと思って、やるなら今でしょ!と(笑)。家をリノベーションするのと同じタイミングで、会社を辞めて独立しました。歳をとっても働き続けられるようにしたかったんです。でも、仕事ばかりの生活になってもつまらない。これからの暮らしを楽しめる環境をつくりたかったんです」

リノベーションを決めたタイミングで姪御さんの上京が決まり、卒業までのあいだ玄関側の一室を貸し出し同居することに。基本的にはAさんの一人暮らしということで、空間づくりはAさんの要望をもとに進行しました。「背の高い家具を置きたくない」というAさんの意向を受け、リビングには背の低い収納を造作。壁付のTVは、あらかじめ壁を補強し配線も隠蔽できるようにして、TVだけが壁面にすっきりと浮かぶように仕上げました。床は、オーク材のフローリング。白と明るい木の色でまとめた空間の中、キッチンカウンターに貼ったアクアグリーンのクロスが彩りになっています。

「この家は、数年前までは父と暮らしていました。家具が好きだった父は、大きな家具をたくさん持っていたんです。一人暮らしなので地震が起きた時のことも考えて、造り付けの収納をつくってもらいました。家具の処分に困っていたのですが、それについてもアクタスがサポートしてくれたので助かりました」

キッチンと同じアクアグリーンのクロスとアーチ型の開口が華やかな寝室は、Aさんお気に入りの海外インスタグラマーの部屋を参考にデザイン。ヘッドボードの後ろは、ちょっとした小物が置けるように天板をつけた腰壁を造作しました。寝室とLDKは引き戸で仕切れるようになっていますが、Aさんはソファをフットベンチのように置いて、部屋を一体的に使用。ベッドに寝そべりながらTV鑑賞を楽しむことができます。

「基本的に引き戸は閉めずに生活していますが、姪の母である私の姉が泊まることもあるので、閉めれた方が空間の使い勝手が良くなると思ったんです。複数の会社にリノベーションを相談していた時、“寝室を仕切れるようにしたい”と伝えたら、“建具にするとコストが嵩むからカーテンにしましょう”と提案されました。でもアクタスは、“引き戸にしましょう”と言ってくれたんです。基本はワンルーム生活でも、“閉じれるようにしたい”という希望に含まれている真意を汲んでくれた。それが、アクタスに依頼することを決めた理由でした」

ワンルーム的空間で開放的な生活を送っているAさんですが、もうひとつ、Aさんの気持ちを開放するプライベートスペースがあります。それはサニタリーとバスルーム。アクタスオリジナルの洗面台は奥行き750mm、幅1500mmとたっぷりサイズにして、シンクの横は座って作業ができるように造作。ミラーボックス内の収納は奥行き浅めで、中身を視認しやすく取り出しやすいようにしました。天板は人工大理石、ミラーボックス下はヘリンボーン貼りのタイルで彩り、床はモルタルのような雰囲気のビニル床タイルでメンテナンス性を確保。椅子を置いていても狭くならないよう、空間自体も広めのサイズで設計しています。

「化粧品やドライヤーを寝る部屋に置きたくなかったんです。かといって普通の洗面所だと狭くて、スキンケアをするにも立ったまま、手短になってしまいがち。座って作業できるようにしたかったんです。防水テレビをバスルームに持ち込んでのんびり入浴して、上がったら映画やテレビを観ながらゆっくりスキンケアをする。これも、思い描いていた理想の生活でした」

手元を隠す高さに壁を造作したキッチンは、白で統一。背面収納のあいだの壁面は多角形の白タイルで仕上げ、さりげなくワンポイントにしています。アクタスのリノベーション『Scandinavian Way』のデザインで造作したキッチンは、メンテナンス性を優先して収納扉の面材はメラミン化粧板に、床はサニタリーと同じビニル床タイルを採用しました。

「キッチンは、窓の外を見ながら料理ができるようにレイアウトしてもらいました。手入れや掃除のしやすさは、キッチンに限らず家全体で配慮してもらったことでした。造り付け収納にしたのも、置き家具は掃除の時に動かす必要がありますし、家具の裏にホコリが溜まってしまうから。床の段差もなくしてもらったので、お掃除ロボットで家中掃除ができます」

引き戸の採用と床のバリアフリー化は、将来への配慮でもありました。ドアをつけず、アーチ型の開口でLDKと区切りをつけた通路は、手摺が必要になった時に取り付けられるよう壁に下地材を施しました。また、玄関は車椅子でも出入りしやすいよう、広くスペースを確保しています。

「父は晩年、車椅子生活でした。車椅子は折り畳めるものが多いんですが、乗り降りや出入りでスペースを使うので、リノベーションする前の狭い玄関では大変だったんです。玄関を広くしたことは、今現在の暮らしでもすごく役立っています。買ってきた荷物や届いた宅配便を一時置きしたり、荷物の開梱もしやすい。土間の感覚で使っています」

独立後、仕事は基本的に家で行っているAさん。リノベーションが完了したのは2020年の春で、新型コロナウイルス感染拡大抑止のために、ステイホームが呼び掛けられ始めた矢先でした。ほとんどの時間を家で過ごしているそうですが、間取りも装いも機能も一新された空間で、快適に過ごせていると言います。

「初めての家づくりでしたし、リノベーションのパートナーに求めていたのは、私の要望をどれほど理解してくれるかということでした。予算の関係で取捨選択することはあったけれど、アクタスとのリノベーションは、自分のやりたいことを変えさせられるということがなかった。あと、自分では必要だと思っていなかったことにもアクタスは気付いて、“こうするともっといいですよ”と提案してくれました。それが積み重なってできたのがこの家。全部が気に入っています」

photo:Hirotaka Hashimoto
text:Kanako Satoh