Case Study 事例紹介

家族の思い出と歴史を引き継ぐリノベーション

T様邸(東京都台東区)

面積:224㎡(4階・5階) 間取り:3LDK+S ご家族:夫婦+子供2人

30代のご夫婦とお子さん2人のTさんご家族のお住まいは、お祖父様が建てた築30年の事務所併用ビルの4階・5階。お祖母様がケアホームへ入居したことから、孫であるTさんが暮らすことになり、ビルの大規模修繕工事後に住居部分をフルリノベーションしました。大理石の床や壁、無垢材の木製建具、ハイサイドライトなど、リノベーション前の空間は、ビジネスで頻繁に海外に行っていたというお祖父様のセンスとこだわりが散りばめられたインテリアでした。

「リノベーション前は、4階にリビングと独立したダイニングキッチン、仏壇を置いた和室があって、5階は個室と浴室という構成でした。リノベーションにあたって、各フロアをどんなふうにゾーニングして使うかのイメージはできていたのですが、既存の空間にいかに自分たちの好みを融合させるかが課題でした」

ご結婚した時に購入したダイニングテーブルはドイツ・TECTAの「M21-1 DINING TABLE」で、リノベーションを検討する以前からアクタスのファンだったというTさんご夫妻。アクタスのメールマガジンでアクタスがリノベーションを行っていることを知り、ご夫婦でリノベーションセミナーに参加しました。

「セミナーで聞いた内容もその後の個別相談でも、アクタスなら自分たちの思うリノベーションが叶いそうだと思って、依頼をしました。この家は普通のマンションと違ってビル。“解体してみないとできるかできないかわからない部分もある”ときちんと言ってくれたことに、真摯なスタンスを感じたし、表層のインテリアだけではなく、建物の構造や設備などもしっかり見て対応してくれそうだと思ったことが、依頼を決めた一番の理由でした」

リノベーションにあたってご主人がこだわったのは、LDKの天井や壁面に極力ものを付けないこと。天井の照明はダウンライトをメインに、ライティングレールは最低限に。エアコンは床置きにして、ドレンホースなどは床下に隠蔽。今回のリノベーションでダイニングキッチン側にはガス温水床暖房を導入しました。リビングとダイニングの間にある壁には、ご主人の希望で放射冷暖房システムを設置しています。

「壁や天井を極力すっきりさせたかったんです。放射パネルのサイズに天井高さや壁の幅を合わせて設計してくれて、サイズオーダーしたかのような見た目になりました。床置きエアコンが収納されているカウンターは造作で、ダイニングテーブルのM21と同じチェリー材で作られています」

リビングから一段上がったステージのようなダイニングキッチンは、アクタスのリノベーションの標準仕様である190ミリ幅のオークフローリング仕上げ。レンジフードのダクトを隠蔽する下がり天井は板貼りにして、ダイニングとリビングを見渡す開放感はキープしつつ、落ち着いたこもり感も演出しています。ナチュラルな空間をキリリと引き締める、錆びた鉄のような表情の化粧材で仕上げたキッチンは、奥様のアイデアから生まれたものでした。

「空間づくりの参考にしようと思って行った住宅建材メーカーのショールームで、この化粧材を見つけたんです。フローリング貼りのダイニングキッチンと、大理石のリビング。二つの空間をどうつなぐかを考えていました。この化粧材を使えますかとアクタスに相談したら、近い柄のシーザーストーンの天板を見つけてきてくれました。暗い色なので印象が重たくならないよう、足元が浮いたようなデザインにしてもらったり、足元部分のコンセントなど、細かいところまで理想的なキッチンができました」

キッチンの横に設けたお子さんたちのスタディスペースは、カウンターデスクの造作も検討したそうですが、将来的にそれぞれの個室にデスクを移動することを考え、アクタスオリジナルの『SARCLE』をセレクト。奥まった場所にあるトイレの手前にある手洗いスペースは、白と華やかな柄のタイル、壁幅いっぱいのミラーで明るく開放感のある場所に仕上げました。リビングに置いた仏壇は扉が内部に引き込める仕様になっており、お子さんが遊ぶ時や来客時には閉じれるようにしています。

「リビングのガラスキャビネットはもともとリビングとダイニングを隔てる位置にありました。祖父母のコレクションの保管場所だったので、そのまま場所を移してもらいました。玄関に続くドアの横に置いたビューローも、ソファセットも祖父母のもの。イームズのラウンジチェアは祖父の定位置でした」

上階の5階は、ウォークインクローゼット付きの主寝室と子ども部屋、サニタリーとバスルームという構成。窓付のユニットバスは、インナーテラス越しに外を眺めることができます。大きな窓からたっぷり光の差し込むサニタリーは、アクタスのリノベーションスタイル「Scandinavian Way」のキッチンと同じデザインで造作しました。タイルのように見える床はPタイルで、水や汚れに強く、足触りが冷たくありません。見た目の心地よさだけでなく、使い勝手の良さ、触り心地の良さにも配慮を尽くしました。

「以前のバスルームは在来工法で、バルコニーに面した窓があったんです。今後のメンテナンスも考えてユニットバスにしましたが、ユニットバスに窓を付けるというのは素晴らしいアイデアでした。おかげで開放的なバスルームになりました。サニタリーの立体的なタイルは、アクタスの設計担当の方が提案してくれたもの。下階の手洗いのタイルも含め、アクセントになるように特徴的なものをセレクトしてくれました」

現在は親子4人で就寝している子ども部屋は、将来二部屋に分けることを想定。当初、「時期が来たら壁を作ればいい」と考えていたTさんご夫妻ですが、アクタスが可動収納による間仕切りを提案。内部にものをしまったままでも動かせる既成のシステム収納で、現在は壁側に配置した収納と、柱のように配置した収納で、ゆるやかにクローゼットゾーンと寝室をゾーニングしています。壁側に収納を寄せた場合よりも空間に奥行きが生まれ、セカンドリビングとしても機能している空間にゆとりをもたらしています。

「リノベーションの進行中にプロジェクター付きの照明を取り付けたいと相談したら、壁幅いっぱいに映写できるように計画してくれました。寝支度を済ませたら、ここでアニメや映画を観ながら家族みんなでくつろいでいます。下階が応接間のような雰囲気なので、上階は居心地の良さを重視しました。そんなふうに、こちらが意図していたことを実現してくれたのはもちろん、例えばドアノブだとか幅木だとか、私たちの意識が及んでいない家の隅々までアクタスのこだわりが反映されていて、良いものに囲まれて暮らす心地よさを日々実感しています」

photo:Hirotaka Hashimoto
text:Kanako Satoh