Case Study 事例紹介

経年美化していく住まいで、名作家具と暮らす至福

S様邸(千葉県千葉市)

面積:85㎡(1階のみ) 間取り:4LDK(リノベーション対象は1階のみ) ご家族:夫婦

ハンス・J・ウェグナー、アルネ・ヤコブセン、フィン・ユール…北欧を代表するデザイナーたちの名作椅子に、ヴィンテージのテーブル、飛騨木工のロッキングチェア、ミナペルホネンのファブリックチェア、日本の木工作家によるスツール。美しい椅子たちが悠然と並んでいるS邸。多角形のダイニングにセレクトしたテーブルはドイツ・TECTAの「M21 DINING TABLE」。リビングのソファはデンマーク・eilersenの「STREAMLINE SOFA」。“今日はどの椅子に座ろうか”という贅沢な悩みが楽しめそうな、至福の時間が味わえる空間です。

「以前の夫は北欧家具にまったく興味がなかったのに、家をリノベーションしたらすっかり夢中になってしまって。私は昔からインテリアが好きでいろいろ見ていたんですが、迷ってしまってなかなか決められないんです。でも夫は、いつも決めるのが早いんです。リノベーションは、“いつかは”と思いつつ、具体的に考えていたわけではありませんでした。それが、私がアクタスのリノベーションセミナーに参加してみると言ったら、ちょうど休みだからと夫もついてきて。セミナーが終わったら“今、アクタスの人と話して、今度家を見てもらうことになったから”って」(奥様)

そうリノベーションの経緯を振り返るSさんご夫妻は、ご主人が60代、奥様が50代。約2年前にアクタスとリノベーションしたご自宅は20年前に建てたもので、挽物の手摺りがついた階段に薪ストーブ、吹き抜けのリビング、多角形のダイニングに、無垢材で作られた窓やドアなど、上質な材料で丁寧につくられた2×4工法の輸入住宅でした。

「基礎がすごくしっかりしていて安心できるなと思ったことと、断熱性能が高く、全館空調システムもついている。私は無垢の木がとても好きなんですが、この輸入住宅は無垢材の使用が標準仕様だったんです。そのことも、この輸入住宅を選んだ理由でした。今回、アクタスのリノベーション担当者も施工をした工務店の人もこの家の質の良さを絶賛してくれて、リノベーション内容ももともとの無垢材のドアやオークフローリングを活かしたプランを提案してくれました」(ご主人)

築年数を経過した戸建てということで、プランニングに取り掛かる前には、建物のインスペクションを行いました。インスペクションとは第三者的な立場にある建築の専門家が、建物の劣化状況や構造上の問題点、断熱性能、欠陥の有無などを客観的に検査すること。検査の結果、基礎も構造体も性能も問題なし。一点だけ、吹き抜けを囲む壁にねじれが発生し、壁にクラックが生じていたため、吹き抜けにモノコック状に梁材を加え、ねじれを止める補強をしました。

「古くなったものや仕上げを取り換えるだけなら、ほかの会社に依頼するのでも良かったかもしれません。でも、せっかくお金をかけるのに、昔のような状態にただ戻すことに疑念を抱いたんです。それで、アクタスがやったらどうなるんだろう?と興味を持って、家を見てもらいたいとお願いしました。この通り木が多い家なので、雰囲気を明るくしたいと伝えました」(ご主人)

キッチンは、アクタスのパブリックイメージである「北欧テイスト」を表現したリノベーションスタイル「Scandinavian Way」のデザインをセレクトしました。キッチンと背面収納の間に置かれていたアイランドカウンターを撤去して、シーザーストーンの天板を使い奥行きたっぷりに造作。背面にはカウンター収納と吊り戸棚をつくりました。コンロまわりの壁には、表面に立体的なテクスチャーのあるタイルを貼りアクセントに。手掛けの無垢材には既存内装の木部と同じオーク材を使い、戸当たりに選んだステンレスはトラディショナルな欧米風の空間にモダンな雰囲気をプラスしています。

「アイランドカウンターがあることで、収納からものを取るのに回り込まなければ行けなかったり、キッチンが奥のパントリーと洗面へ続く動線にもなっていたので、ちょっとしたことですが、ストレスを感じていました。今はスペースが広々していて動きやすいですし、背面収納も扉ではなく引き出しにしてもらって便利になりました。キッチンの上の無垢板の吊り棚は気に入っていたので、それの位置は変えずに、キッチン天板の奥行きや配置のバランスを調整してもらいました」(奥様)

玄関側とキッチン側、両方からアクセスできるサニタリーは、パントリー・洗濯室・脱衣所・洗面室・トイレが一体化した空間。床はジュート織風のビニールカーペット仕上げ。キッチンと同じデザインで作った洗面台には、クラフト感のあるタイルをコーディネート。トイレはスモーク処理をしたガラスドアで開放感をキープしつつ、ご家族間やゲストのプライバシーにも配慮。モダンなデザインと既存の木製ドアが馴染むよう、トイレの収納付き手洗いは既存を利用しています。バスルームはご主人たっての希望でガラス張りに。パントリー兼洗濯室との間にはロールスクリーンを取り付け、入浴時はスクリーンで目隠しできるようにしました。ここは、ご主人の夢を叶えた空間です。

「ホテルのようなバスルームにしたかったんです。仕事柄、国内外へ出張することが多く、中でも長崎のオリーブベイホテルのバスルームが好きで、あんな空間にしたいとリクエストしました。浴室の前にはベンチとしても使える収納を提案していただいたんですが、床から天井までガラス壁にしたかったので、それを叶えていただきました。最初は困惑していた妻と娘も、今では“もう以前のような普通のお風呂には入れない”と言っています(笑)」(ご主人)

Sさんご家族が丁寧に暮らし、美しく経年したもともとの建物の良さを活かしたS邸のリノベーション。壁天井は、アクタスのリノベーションの標準仕様である珪藻土クロスに張り替えましたが、幅木は既存のものを一度外して再度付け直しています。玄関は正面の壁のクロスをラベンダー色のものに張り替えました。プラン変更で取り外すことになったドアは、廊下側のサニタリー入口のドアに再利用しています。

「建て替えを考えたことはまったくありませんでした。歳をとっても、この家を充実させていこうと考えていました。老後は都心に住むという選択肢もあるかもしれませんが、ホテルに泊まりに行けばいい。今は新型コロナウイルスの影響もあって、仕事のテレワーク化も進んでいるし、家で心地よく過ごせるというのは、いいですよ。出掛けていても、早く家に帰りたい(笑)。何をするというわけではないんですが、ここにいると気持ちがいいんですよ」(ご主人)

テラスはもともとは目隠しの囲いだけだったのを、リノベーション後にガーデニングショップに依頼してインナーテラスに改装。隣の庭も、土を除いてテラコッタ敷きにして、草木の手入れや管理がしやすいようにしたそうです。愛着を持って住んできた家を慈しみ、そこでの暮らしをより豊かに、長く楽しみ尽くそうとしているSさんご夫妻。アクタスのリノベーションのコンセプトである「人も住まいも、長く良く活きるために」を体現したような住まい方です。

text:Kanako Satoh