Case Study 事例紹介

“暮らしへの肌ざわり”を追求した着心地のいい家

O様邸(神奈川県横浜市)

面積:82.82㎡ 間取り:2LDK + WIC ご家族:単身+猫

「仕事で海外に行くことが多く、フランスやフィンランドなど、海外の家々をたくさん見てきました。日本の家はとにかく白く明るく!という感じだけれど、あちらの家は暗い色や濃い色を多用していて、それが家具としっくり馴染んでいる。この家もそんな空間にしたいと思っていました。アクタスがリノベーションで使っているオリジナルのクロスにウォームグレーが用意されていて、“同じ価値観を持っている”と感じたんです。空間の空気感や、それをつくる素材の質感や色など、暮らしへの肌触りを大切にしたいと思っていた自分の感覚に、アクタスは共感してくれると思ったんです」

ウォームグレーの珪藻土クロス、淡いホワイト塗装仕上げのヘリンボーンフローリングでまとめたグレートーンのLDKには、マホガニー材のテーブルやウォルナット材のシェルフ、ネイビーのソファが鮮やかに映えながらも、落ち着いた雰囲気が漂っています。この家に暮らす話すOさんは、教員として大学に勤める研究者。所属先が変わる可能性がある仕事柄、長年賃貸派でしたが、引っ越し先を探している際に偶然、現在の住まいを発見し、惚れ込んだことで購入を決意。1988年築のマンションで、緩やかな傾斜地に段々状に計画された住戸、中庭や広いテラス、公園のような共用部など、ヨーロッパの街並みを感じさせる造りに惹かれたと言います。

「家に求めたのは、“うまく休めること”でした。個人としての自分と研究者としての自分が常につながっていて、切れ目がないからうまく休めないんです。以前はずっと研究室に篭っていて、家は寝る場所、着替える場所といった感じ。今回家を買って、将来は家で仕事をする可能性もあったので、二つの自分がつながりながらも、ちゃんと休める場所にしたいと思っていました。結果はちょっと失敗。思っていた以上に休める家になっていました(笑)。今はほどほどに家に仕事を持ち込むことができるし、集中が切れたらすぐ休むこともできる。家で過ごす日常というものを、この家をつくって初めて手に入れました」

背板のないブックシェルフは、書斎でデスクに向かっているときは適度なこもり感をもたらし、LDKと緩やかにつながっていることで、LDKで気分転換することや休息をとるという気持ちを促します。ブックシェルフは、帆立はウォルナット材で、棚板はグレーでデザインし、空間と馴染ませました。デスク側の壁に貼ったアクセントクロスは、アルネ・ヤコブセンがデザインした「ラディソンSASロイヤルホテル」のテーマカラー“ROYAL BLUE”の近似色をセレクト。キッチンの壁に掛けられたアルネ・ヤコブセンの「CITY HALL」もこのカラーのモデルで、Oさんのリクエストでこの時計に合わせました。

「キッチンの面材はダイニング側は塗装で、内側はメンテナンスのしやすさとコストダウンを兼ねてメラミン化粧板で仕上げてもらいました。コンロまわりは石目調のキッチンパネルです。アクタスは素材感へのこだわりを大事にしながら、コストダウンの工夫もいろいろと施してくれました。お気に入りはパントリーの出入り口。この、アーチ型の開口の先に収納が見える“画”が欲しかったんです。オープン収納でもこんなふうに出入り口に工夫をすれば、頑張って片付けなくてもおしゃれに見えます」

書斎・ホール・寝室・ウォークインクローゼットの床は、Oさんの提案でファブリックタイルを採用。Oさんの愛猫に考慮したもので、汚れてもタイルを取り外して洗うことができます。ほかにも、玄関からの冷気防止と猫の飛び出し防止を兼ねるガラスドアの設置や、アーチ型の猫用出入り口の造作、人用トイレの壁面収納の下部を猫用トイレにつなげて掃除できるようにするなど、愛猫と快適に暮らすためのアイデアを各所に盛り込みました。

「引っ越し先を探している時には新築マンションも見ました。でもそこにあったのは、平均から導かれた“枠”に暮らしをおさめなくてはいけない空間。幅のあるものから導かれたものが平均であって、“平均=みんなに合う”じゃないんです。私は、自分を合わせる家ではなく、自分に合う着心地の家がほしかった。だからこの家をつくる時は、“普通はどうか”ではなく、“私たちにとってどうか”を考えました。年齢的にも自分の価値観や好きなものがわかっていたので、無難にする必要は一切ないと思って。アクタスは私が“こうしたい”と言ったことを決して否定せず、“私たちの暮らし”に合わせた住まいを一緒に考えてくれました」

寝室を経由しないと、洗面室、浴室、ウォークインクローゼットにアクセスできないプランも、「プライベートな場所なのでパブリックからアクセスできなくてもいい」というOさんの考えから。中庭を見ながら長いホールを通って辿り着く寝室は、まるで“離れ”。鮮やかなプラム色のアクセントクロスは、Oさんがセレクトしました。洗面室への出入り口もアーチ型の開口になっており、Oさんはベッドから洗面やウォークインクローゼットが見える風景もお気に入りだと言います。

「寝室、洗面室、ウォークインクローゼットをぐるりと回遊できる動線にしました。洗面室からクローゼットに入ってすぐの場所に洗濯機を置き、その隣で室内干しやアイロン掛けをして、そのままクローゼットに片付けられるレイアウトは、長年の賃貸生活でずっと“こうだったらいいのに”と思っていた形。ここで一時干しをして外に干すこともありますが、冬はエアコンを付けて暖房を兼ねながら除湿機を併用して乾かすことも多いです」

“使うものを使う場所にしまう”という収納計画もO邸の特徴。シーザーストーンを天板と壁面に取り入れた洗面台は、たっぷり設けた引き出しにメイク道具やスキンケア用品などを収納。洗面室にはタオル用の可動棚や、洗剤などのストックをしまう扉付き収納も造作しました。長さが5m以上あるウォークインクローゼットには、既製品のクローゼットシステムをスペック。造作棚と組み合わせて、大容量を確保しました。Oさんのライフスタイルに則した、機能的で整理整頓もしやすいプランです。

「アクタスとの家づくりは、家具選びもカーテンやブラインド選びも、どんな場面でもプロが出てくるのが心強かったですね。LDKにグレーのカーテンを提案された時、空間が重くならないかちょっと不安だったんですが、実際に付けてみたらすごく良かった。ソファやベッドも設計段階で決められたので、その後がスムーズでした。『HORSE SHOE』のダイニングセットは、これまで引っ越しが多くてちゃんとした家具を持っていなくて、“いつかこれを置きたい”と以前から決めていた家具。アクタスの家具を置くなら、リノベーションもアクタスにお願いしたらいいのでは?と思ったのが、相談するきっかけだったんです」

リノベーションによる家づくりのプロセスを経て、「改めて自分がどういう人間なのか、どう生きていきたいのかを知ることができました」とOさん。リノベーションは“ライフスタイルの棚卸し”。自分にとって本当に価値のあるものを見極め、自分らしい暮らしにフィットする素材と形を追求した住まいでの暮らしは、そのライフスタイルを一層輝かせてくれるはずです。

photo:Hirotaka Hashimoto
text:Kanako Satoh