Case Study 事例紹介

“家具のようなキッチン”に合わせて空間を整える

T様邸(東京都新宿区)

面積:約60㎡ 間取り:1LDK ご家族:ご夫婦

Tさんご夫妻が暮らすのは、都心のタワーマンション。以前は同じマンションの別住戸に暮らしており、より眺めが良く、広さもある住戸へ住み替えるタイミングで、キッチンを中心としたリノベーションを行いました。玄関からLDKへ入ると出迎えるのは、天然石のような表情の天板と無垢の木の手掛け、真鍮の戸当たりのラインが美しいキッチン。その先のリビングダイニングには、パノラマビューが広がっています。

「“家具のようなキッチン”にしたかったんです。樹脂素材が使われたよくあるシステムキッチンは、素材感が好みではないし、“設備機器”という存在感や、工業製品的な佇まいがあまり好きではなくて。キッチンを新しく作り変えるのに合わせて、LDKの内装も整えたいと思っていたので、空間と調和するキッチンを求めていました」

もともとの間取りは2LDKで、システムキッチンが壁付けされていました。タワーマンション故に開閉できる窓がキッチンと奥の主寝室の2箇所しかなく、Tさんご夫妻は個室をひとつなくして、住戸全体の風通しを良くすることも希望。さまざまなキッチンメーカーのショールームを回り、オーダーキッチンの会社にも相談していたそうです。

「ですが、なかなか気に入るものがなく、内装は別会社が担当するというケースも多くて。悩んでいたときに、アクタスがリノベーションをやっていることを思い出したんです。アクタス新宿本店に展示されているキッチンは、どれもすごく素敵で。『SCANDINAVIAN WAY』のオリジナルキッチンは、収納扉の手掛けと戸当たりのデザインがアクセントとして効いているところが気に入りました。リノベーションの内装デザインもシンプルで好みだったので、依頼することにしました」

ペニンシュラ型の対面キッチンは、幅が2300mm、奥行きは945mm。玄関からLDKへ入る動線を遮らず、背面にカップボードも置ける範囲で、最大限のサイズを確保しました。収納扉のカラーはウォームグレー、手掛けは無垢のウォルナット、戸当たりの部分は真鍮をセレクト。天板は、材質のほとんどを石英が占めるシーザーストーンで、アクタス新宿本店で展示されていたキッチンに使われていたものを見てTさんが気に入り、採用されました。

「壁付けキッチンにすると、カップボードで風通しを遮ってしまうことになるので、対面キッチンにしました。作業スペースが広くてとても使いやすいです。天板はLDKに入ってすぐ目に入る箇所なので、素材感にこだわりたいと思いました。アクタス新宿本店で展示されていたキッチンにシーザーストーンの天板が使われていて、天然石のような表情と薄さが気に入りました。シンクは、内側がすっきり四角いステンレス製のものを選びました。悩んだのは水栓です。主張の少ないものを探したんですが、なかなかなくて。ならばと発想を変えて、hansgroheのオブジェ的な造形のものにしました」

キッチン背面のカップボードも、キッチンのデザインに合わせてオリジナルで造作。吊り戸棚の収納扉は全面をウォルナットにして、見た目が単調にならないようメリハリをつけました。見た目だけでなく機能性にも気を配り、カップボードはキッチン家電が扱いやすい高さ1050mmに。キッチンの収納とカップボードは一部を二重引き出しにして、収納扉の数を減らして見た目をすっきりさせつつ、収納量の確保と物の出し入れのしやすさを叶えました。キッチンのダイニング側は、書類や救急箱などを収めるリビング収納になっています。

「吊り戸棚も同じ仕上げにすると、“システムキッチンを置いた”という感じになってしまいそうなので、ダイニングテーブルの天板と同じウォルナット仕上げにしてもらいました。コンロはグリルレスにして、IHとガスのハイブリッドに。コンロ下は引き出しにして、調味料やカットボード、レードルなどの調理器具を入れています。収納計画も設備機器選びも、アクタスの担当者さんがとても親身になって、一緒に考えてくれました」

重厚な色や金属素材を使いながらも軽やかなフォルムの家具たちや、家具による各所のコーナーのつくり方、奥の書斎コーナーまで敷いたラグなど、随所にTさんご夫妻のセンスが光るT邸。色味や素材感によって家具とキッチンを調和させるだけでなく、それらを包み込む空間にも一工夫。白いクロス貼りだった壁と天井をモカブラウンのクロスに貼り替え、眩しさを抑えて落ち着いた雰囲気に。照明位置の変更もTさんの当初からの希望で、天井全面に分散配置されていたダウンライトを小型のLEDダウンライトの集中配置に変更しました。

「既存のダウンライトが大ぶりだったので、設置箇所を絞って天井をすっきりさせたかったんです。LEDにしたのは、ライトコントロールできるようにする目的もありました。LDKで過ごすことがほとんどなので、照明の明るさや色で部屋の雰囲気を変えられるようにできたのは、良かったです。ダイニングテーブルの上は、後々違う照明器具に変えることもできるようにと、アクタスの担当者さんが引っ掛けシーリングを提案してくれました。キッチンのデザインに合わせて、真鍮色のペンダントライトを選びました」

リビングから寝室へ続くドアの横には、エアコンのダクトを隠蔽する目的も兼ねて、柱にふかし壁を付けてニッチ収納を造作。寝室には新たにクローゼットを造作しました。実はリビング側のAVシェルフは、一部が裏のクローゼット内に突き出すような形になっており、プレーヤーはその中に収納。リビング側の壁にはTVとサウンドバーを置いたAVシェルフだけが現れるようにしました。

「以前の家でもTVは壁付けにしていたんですが、電源コードやAV機器の配線が露出してしまうのが嫌だったんです。電源コードはクローゼット内に設置してもらったコンセントに接続していて、配線もクローゼット内でつないでいます。複数あって面倒だったリモコンも、これを機にスマートリモコンにしました」

キッチンの造作を中心に、細やかな空間調整を積み重ねたT邸の空間づくりは、まさに“整えるリノベーション”。空間づくりでは、キッチンや内装といったわかりやすい要素に着目しがちですが、お持ちの家具との調和や照明計画、家電の収まり方なども、住み心地を大きく左右する重要な要素です。住まいを整えることは、暮らしを整えること。大人の二人暮らしならではの、スマートな住まいです。

text:Kanako Satoh