Case Study 事例紹介

まもなく結婚30年。これからの人生を考えた、夫婦のふたり暮らし

S様邸(横浜市青葉区)

面積:74.37m² 間取り:1LDK+書斎 ご家族:ご夫婦

「ふたりいる娘の下の子が、昨年の1月にひとり暮らしをするといって、家を出たんです。子供たちがそれぞれ独立したことをきっかけに、これから夫婦で過ごすこの家を、もっと住みやすく、暮らしやすくしようと考えた時に、リノベーションという選択肢が浮かびました」

S様ご夫婦は、まもなく結婚30年目。新築で購入し、家族4人で25年ほど過ごした愛着のある住まいを、アップデートすることにしました。

長年暮らしていて何より気になっていたのは、寝室や子供部屋として使っていた、北側の部屋の寒さです。

「何社かリノベーション・リフォーム会社は検討しました。もちろん各社、得意不得意があって。例えば断熱を得意としている会社に話を聞くと、断熱の話ばかりでインテリア面がしっくりこなかったり。私たちは、ただの新築みたいにしたいわけではなくって。

たまたま、よくアクタスに行っていたこともあって、リノベーションをやっていることを思い出しました。リモートでお話を聞いた後に、ふたりで新宿のショールームに行ったんです。実際に見て、長い時間を過していても居心地がよくて、このまま、この空間に住みたいなと思わせてくれました。

あとは、キッチンを出しましょうとか、書斎はこうしましょうとか。断熱のこと以外にも、これからの暮らしを考えた提案に、すごくワクワクできたのも大きいですね」

以前はダイニングの奥に位置し、おこもり感のあったキッチンは、オープンな空間に。そして元々のキッチンの場所には、大きなパントリーをつくりました。冷蔵庫も収納することで、すっきりとしたダイニングキッチンです。隣に続く和室も一新し、くつろぎのリビングが広がります。

「キッチンがオープンになることで、以前よりみんながキッチンに立つようになりましたね。このあいだ、娘が友達を連れて帰ってきて、ケーキをつくっていきました。

ダイニングとリビングの仕切りは、ドアをなくすとか、ガラスにするという提案もありました。そのほうが開放感がありますが、娘たちが帰ってきた時は、リビングに泊まることになります。引き戸を閉めればちゃんと個室になるようにオーダーしました」

「僕は、全部を新しくするんじゃなくて『暮らしの継続』がテーマとしてあったのがよかったです。

元々のリビングの壁の一面を、妻が頑張って青緑色に塗ったんです。いい色で家族みんなが気に入っていました。そこで、あたらしい寝室のアクセントクロスをどうしようかと話していた時に『思い出を引き継ぐという意味でも、この色を寝室に持ってきませんか?』と提案されたのが印象的で。

断熱をしたいという僕らの要望がまずあって、寝室や書斎は寒くなくなって快適になったんですけど、それ以上に生活とか暮らしの提案が、別の付加価値として感じられたというか。こういう暮らしがしたかったんだなっていうのを、アクタスに教えてもらえたように思えます」

家族団欒の思い出の詰まったダイニングテーブルはそのまま。リビングにあったチェストも、テレビ台に組み替えて使い続けています。書斎の机や本棚は、以前はお子様のものでした。

家具に関してリノベーションの担当スタッフは、こんなアドバイスをしたのだそう。

「お客様と打ち合わせする時に、家具を手放すのを悩まれる場合は、一旦リノベーション後のお部屋に置いてから、考えましょうとお伝えしています。愛着がある家具を持たれている方も多いですし、置いてみてもし違ったら、あとで変えればいいんですから」

無印良品のオークの家具は、実はアクタスのオークの床材などと相性が良く、空間になじんでいます。

年始にお子様が独立して、2月頃にはすでにリノベーションについて動き出していたS様。11月には工事を終え、新年を我が家で迎えられるように逆算してスケジュールを組みました。スピード感のある家づくり。工事のために7月には、一度荷物をまとめて仮住まいに引っ越しをします。

「娘たちが家を出る時に『自分のものはちゃんと整理してね』と伝えていたので、子供のものはそこまでなかったんですけど、古いタンスを手放すなど、かなり断捨離はしましたね。引っ越しは想像以上に大変でした。

仮住まい先はここから近い、駅前のマンションでした。この家は駅から少し離れているから、万が一、駅近の便利な暮らしを気に入ったらどうしようなんて思ったんですけど、住んでみたら静かな我が家が恋しくて恋しくて。早く帰りたいと毎日のように話していました」

工事の期間は4ヶ月。その間おふたりは、住み慣れたマンションの環境の良さ、暮らしやすさを再確認したのだそう。

念願の我が家に戻り、約1年が経ちました。ご主人様は今回のリノベーションをこう振り返ります。

「僕はなにより、プロセスが楽しかったです。妻とこんなにも密にコミュニケーションを取ることって、あまりなかったなと思って。子供がいたら子供の話になりますし、僕たち夫婦はサッカーが好きなので、その話は普段からよくしていました。

けれど、これからの人生をどうしようとか、暮らしについてどう考えているかとか、家族って、夫婦ってなんだっけ?みたいな議論を、今回のリノベをきっかけにたくさんするようになりました。

娘たちにも帰ってこられる家はあるけれど、僕たちは子育てを一区切りをしたから、それぞれ子離れ、親離れをして、独立してやっていこうという、一つのメッセージになったんじゃないかと思っています。

仕事をしながらこのプロジェクトを進めるのは本当に大変でした。ただ家をきれいにするだけじゃなくて、現役のうちに金銭面も含めて、これからの人生設計を考えられたのはよかったですね」

ダイニングには、今回新しく迎え入れたデンマークのヴィンテージチェアがあります。窓際のこのチェアは、家全体を見渡せる特等席。おふたりともここに座って、あたらしくなった空間を眺めるのが好きなのだそう。

「この椅子は引っ越してすぐの11月に、夫婦で神戸にサッカーを見に行った時に、ヴィンテージショップで一目惚れして買ったものです。私たちと同い年ぐらいの椅子なのかな。前日に応援していたチームが優勝したこともあって、背中を押されたのも大きいですね。

今までこんなふうに、夫と家具を見に行くことはなかったんです。リノベーションを機に、ふたりで家具や照明を選んだり、グリーンを見に行くことが増えました」

家族4人で過した愛着のある住まいは、これからの夫婦ふたり暮らしに向けて、大きく生まれ変わりました。

音楽を聴いたり、プロジェクターで映画やサッカーを見たり、おふたりとも家で過ごす時間が多くなったと言います。お子様たちもカーテン選びなどの家づくりに参加して、夫婦のあらたな暮らしを、応援していたのだとか。

今回のリノベーションをきっかけに、夫婦の関係や家族の関係も、よりよい方向に進んでいったように思えます。家族で一大プロジェクトを乗り越えて、なかなかできない経験ができたと、満足そうにS様は話していました。

photo:Hirotaka Hashimoto(before写真を除く)
text:Yuki Akase